スポンサーサイト

--.--.-- --:--
スポンサー広告
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

桜草の野原に Vol.4

緊張もしない。

特に何も、思いつかない。

つくづく俺って、淡白な人間。

なんとなくなつかしいな、とは思う。

ふと、中学の頃を思い出す。

初めて、今までと違う生活を経験した。

日本―。

あの頃何度も見た、この玄関。

…ヤッパリ何の感慨もないケド。

俺はふう、ととりあえず息を吐く。





「はいはい~」

まろやかなやわらかい声が聞こえてくる。

「はーい、どな…あら?」

別に太ってもいないけど、まあ、要するに、小ぢんまりした感じの、おかあさん。

…カルピンに似てるな。

俺は、あの頃飼っていた猫のことをつい思い出す。

「?あ、桜乃?桜乃に用事かしら?どなたさま?」

あー、そうか、この人初めて会うんだっけ。

「いえ…越前です。あの、スミレ先生に用がありまして…元生徒で」

スミレ先生、という響きとあのばーちゃんのギャップとに一瞬今朝食べたものが上って来そうになる。

…すんません、監督。

「え!あーっ!!越前?越前選手?!あの、この間もウィンブルドンとか出てましたよねえ?!優勝おめでとうございます!まあまあ!!お待ちくださいね、呼んできますから…あ、あがってあがって」

「あ、はあ」

この人、特にテニスに詳しいわけでもなさそうだな、と思いつつ、俺は竜崎家にあがりこむ。

「そういえば…初めてお会いしますね。俺何回かここ来たことあるんですが」

「そうですねえ…わたしたちも留守が多いものでね…」

さみしそうに、竜崎母は笑う。

お茶を出され、しばらくぼんやりとあたりを眺めていた。

やっぱり特に緊張もしない。

むしろくつろぐ。

「おおおおおおおおおおおっっっ」

突然の大声に、さすがの俺もびくっとなる。

…やべえ。

忘れてた。

ばーさん、こんな人でもあったんだっけか。

竜崎スミレが、目を童子みたいに輝かせて、さあこれからだきつきますよ、といわんばかりに両腕を広げている。

さすがの俺も、身構える。

案の定、撫でくりまわされる。

…いちおうこれでも成人してんだけど?

このばーさんは、よくわかんない。

真面目でしっかりしているかと思えば、どこの馬鹿な若者かよ、と思うくらい、変にテンションが上がる。

まあ、そのおかげで実際、青学での半年は、楽しかったとは思っている。

「この薄情もんめっ。まったく、日本にもほとんど寄りつきゃしない。えらくなったもんだねえ」

「や…、先生、そんなことはないっすってば」

スミレは豪快に笑う。

「いやいや、久しぶりに会えて、嬉しいよ、リョーマ。おかえり」

俺は一瞬、口ごもってしまった。

うぃっす、とだけ言うと、なんじゃそら、とまた豪快に笑う。

けど。

老けたな、ばーさん。

と、思った。

そんなに、会ってなかったんだっけ。

親父の、顔のしわが、増えていた。

まだそんなじーさんて年でもないだろうがとも思ったけど。

そうか、俺が、大人になってるんだな、と思う。

「パパラッチは大丈夫だったか?」

「え?ああ、ばっちりっす。俺結構影薄いんで」

「ははは、それはないと思うがなあ?まあ、有名になると大変だねえ」

「まだまだっすよ」

スミレの手が止まる。

リョーマは、どこともなしにぼんやりと見つめながら、にっこりと笑っていた。

「あ、これ食っていいっすか」

「ん?まーたリョーマも甘いものが好きだねえ。あ、そうだ、桜乃がお前が来るかもしれないってファンタ買ってきてたっけね。飲むかい?」

どくん。

いきなり、その名前をさらっと言われて、手先から、血の気が失せる。

頭に、血が一気に上って。

耳が赤くなるのを、感じた。

やばい。

幸いなことに、スミレは目標ブツの冷蔵庫しか見ていない。

少し、ほっとした。

「あ、あざーっす」

「はは。礼なら桜乃に言いな」

ばこん。

冷蔵庫のドアが開く。

やばい。

さっき、予測不可の事態になったせいで、俺はまだ変に動揺していた。

急に緊張する。試合でもめったに緊張しないのに。

「竜崎は…今いなかったんですか」

「ああ、今大学にいっとるだろい」

「ああだいが…て、は?」

「ん?」

いや、聞いてるのこっちだから。

「あいつ大学行ってんですか」

「なんだいリョーマ、私の孫だよ?ちょーっと失礼じゃないかね?」

ばーさんは楽しそうに笑う。

俺は少し考え込む。

「…なんとなく俺の中で竜崎はそんなに勉強出来てたってイメージが…」

「ははは、中の下、か中の上、ぐらいかね。でもまあ、がんばったんだよ、桜乃なりにね。一応、大学ぐらい出しとこうと思ってね」

え、そこばーさんの権限なんだ。

といいたいのをぐっとこらえる。

「なんだい、桜乃に会いにきたのかい?」

スミレは、ニヤニヤしながら、言った。

リョーマはしばらくぼんやりしていた。

また少し、考え事をしてしまっていたのだ。

リョーマは、ぼんやりと、静かに答えた。

「はあ…まあ、ちょっと話がしたいなとは」

スミレは口をかぽん、と開ける。


俺は、ふと、ファンタグレープの缶とコップをしっかとにぎりしめつつ、大口を開けて突っ立っているばーさんに気付いた。

「…何やってるんスか、先生」

「え?あ、いや…」

「はい?」

スミレは、黙ったまま、静かに椅子に座る。

「…」

「だからなんスか」

「…なんか、お前、どうかしたのか?」

「は?」

「いや…いつものお前だったら、淡々とクーーーールに『別に』と言うか無視だろう。どうした、なんだかさっきから思っていたがぼんやりして…。いつものリョーマの覇気がないぞ」

「はあ、そうっすかね」

俺は、ファンタを一口飲む。

未だにこの何の変哲もない飲み物が好きな自分にも、少し笑える。

「なにかあったか?桃城の結婚式とはいえ急に来るなどと言うし…」

「桃先輩っすからね、行かないとあとあとなんか面倒デショ。」

「…」

「まあ、」

俺は一息つく。

あ、まただ。

また、ぼんやりとしてしまう。

「俺も最近、いろいろ考えるところもあって」

スミレは、黙っていた。

ぱりん、と煎餅の割れる音だけが響く。

台所で、竜崎母が、何かを作っているのだろうか。包丁のとんとん、といういい音が聞こえてくる。

まるで、ボールを地面にドリブルしている音みたいだ。

俺は、椅子で片ひざ立てたまま、目を静かに閉じた。

ウィンブルドンでの、コートが目の前に広がる。

相手は、好敵手だった。

引退間近のおっさん。

何か有名な人だったみたいだけど、そんなのはどうでもいい。

でも、楽しかった。

まあ、買ったけどさ。親父と互角か、それ以上かもな。

世界は、広い。

親父は言う。どんどんすげえ選手がわんさか出てるよなあ、と。

実際、そう思う。

でも、昔のプレーヤーもみんなすごい。

親父は、すごい。

そう、最近、思う。

多分俺は親父を越えたと思う。

今やっても、本気を出せば勝てると思う。

それなのに、絶頂期にやめた、親父には、

まだまだ勝てない気がする。

他の人間に負けてる段階でまずだめだし。

いつも勝ってばかりだったわけじゃない。

でも、どの時も、悔しかったけど、楽しかった。

テニスは、楽しい。

でもまだ、まだまだだ。

もっとやりたい。

「今日はこれから用事はあるのかい」

「いえ」

「おー、それじゃあ、桜乃が帰って来るまでのんびりしていきな。せっかくだしね」

「せっかくだからお夕飯も一緒にいかがですー?」

台所から、明るい声が聞こえてくる。

「はあ…あざっす」

スミレも竜崎母も笑う。

俺も、笑った。



音が鳴って、扉が開く。

声が聞こえる。

一瞬、時間が止まる気がする。

高くて、

でも、中学の時より、心なしか、低くなったような、

落ち着いた、静かな声。








え?

桜乃は、玄関の運動靴を見て、固まる。

これ…















「ああ、お帰り、桜乃」








どきどきする。




おばあちゃんや、おかあさんのお帰り、にも、ろくに返せないまま。




ストレートの、ぼさぼさの髪が、

細い、体が、

見とれてしまうほど、きれいに見えて、

言葉が出ない。




久しぶりに、まっすぐに向けられた、

切れ長の、大きな瞳が、

ときを、止めた。






=======続く=======







やっと再会。ながっ。



スポンサーサイト

桜草の野原に Vol.3

それは、ほとんど思い出しもしなかった名前。

思い出しもしなかった、思い出、とも言っていいのか分からないくらいの、記憶の断片。

俺は本気で、テニス以外のことに、自分のこと以外に、興味なんて、ない。

考えている暇なんてなかった。

考えるほどの余裕もない。

考えないでいられるほど、毎日懸命に生きてきたし、テニスに没頭して、実際それが一番の、俺にとっての充実だった。

ほかに楽しいことがあるなんて思いもしない。あるとしても、関係なかった。

たまに、それなりに、普通の生活、

普通の学生、普通の暮らし、していたら、どうだったかなとも思うことも、あった気はする。

でも、ちょっと想像してみただけ。

それがいいとも悪いとも思わない。うらやましいとかうらやましくないとか、そんなのは関係ない。

それぞれいいならいいんじゃないかと思うだけ。

俺は、俺でよかったと、思うし。

天才、あるいは、天才の息子、という言葉がついてまわる。

それが、プレッシャーだと感じたことも、ない。

けれど、俺は、天才じゃないと思う。

いや、天才だけど。

うまく言えない。

何もしないできたわけじゃない。

がんばってきた、とは言わない。努力したとも、思わない。

けれど何もしていなかったわけじゃない。

それが、俺の、俺自身の、すべてだ。


アメリカ人は、どうも、感覚が、早い。

早熟、っていうんだろうか。

小学生のときから、それはちらほらと話に上がっていた。

けど、別に興味はなかった。

それに、俺は今テニスがあるから、といえば、誰も何も言わなかった。

けれど、無視していたことも、いつの間にか、自分自身たまに苦しむ結果になった。

日本にいたときまでは、まだ感じていなかった。

身体が、変わっていく。

俺の気持ちも、変わっていく。

イライラした。わりきれなかった。

テニスとこれとは別だと、

両立している奴もいるって、知ってても、

わりきれない。

女は嫌いだ。

俺をかき乱す。

テニスをしていると、何も考えなくていい。

そういう話題も、登らない。

俺は、一人で、試合に、練習に、没頭した。

今まで、さびしいとか思ったことなんか、ない。

けれど初めて、孤独を感じるようになった。

何も考えたくなくなって、


テニスは、楽しかった。

俺はこのために、生まれてきたんだって。

その理由さえあれば、何もいらない。





けれど、やっぱり、考えるようになった。

だんだん大人になっていく。

うらやましいとかいう気持ちが、まったくわかない自分も、自分でおかしいとは思うけど、

でも、やっぱり、考えるようにはなった。

俺は、俺も、いつか誰かと結婚とかするんだろうか。

付き合うとか、めんどくさい。

テニスをしている方が楽しい。

それでも、結婚なんて、できるんだろうか。

憧れがないと言えば、憧れというほどではないんだけど、でも、否定するのは、嘘になる。

女を見ても、好きだとか言う気持ちが、一つもわいてこない。

LOVEだなんて、実感もできない。

自分の、身体がたまに求めているときはあっても、それだけで。

あんなに他の奴らがだれか一人の女を大切にする気持ちが、わからない。

けれど、俺だって、

親父の変態さとか、いい加減なとことか、

母さんの奔放すぎるとことか、正直ついてけないとか思うことはあるけど。

でもそれなりに、二人のことは、好きだと思う。

だから、俺だって、いつかはあんなふうになりたいとは思う。

でも、わからない。

好きになるってことが、わからない。

そんな、とっくに解決していてもよさそうなことが、

無視していたせいで、今頃、今更、

俺の頭の中に、よく表れてくる。




とくに大した思い出はないはずなのに、

ほとんど思い出さないのに、

でもたまに思いだす。

竜崎桜乃。

けれど、たまに日本に帰った時見かけたこともあったけど、

やっぱり、よくわからない。

頭の隅には、残っている。

でもわからない。

これが好きだということだとも、思わない。

普段全然思いださないし。

けれど、思い出すとき、俺はぼんやりとなる。

なんとなく、風が止まる気がする。

だから、思うようになった。

今はまだわからないけれど、よく分からないけど。

俺が結婚とかもし出来るようになるとしたら、

竜崎くらいしか、いないんじゃないかって。


そう、最近、よく思う。

でも、だからといって何をどうこうするのか、わからない。

わからないまま、俺は、日本にまた行くことにした。

ほんとは、行かなくてもよかった。

いや、行ってもよかったんだけどさ。

桃先輩の結婚式だし。

それなりに好きな先輩ではあったし。

でも別に行かないなら行かなくてもよかった。特に強い気持ちはない。

けれど。

今まで、見かけても話す気も別に起きなくて、そのままいつも帰ってきていたんだけど、

でも、今回は、

ほんとに初めてかもしれない。

久しぶりに、竜崎と話してみようかなと、思った。

いや、話してみたく、なった。




なんとなく、ほとんど13歳の夏でとまっている自分の時間のある部分が、

動き出したような、気がした。














========続く========








やっと王子だしました!(笑)

もしかしたら、こんなのリョーマじゃない!!ってブーイングが来るかも(笑)

でも、なんとなく、私の中で大人になったリョーマってこんな感じです。

淡々としているというか。。。

攻め攻めってイメージではないんです。あくまで淡々と静かなイメージがあります。もちろんテニスに対しては今でも生意気?ですが。やっぱり13歳そのままの性格では人間いられないと思うんですよね。わたしは男じゃないから思春期の少年の心はわからんけど。。。

ちなみに、ここでは桃杏の設定にしていますが、私自身は絶対桃杏派っていうわけではないです。神杏も好きです。ふつうにいいと思います。というか、原作で大きな動きがない限り、よっぽどじゃない限りふつうは側にいる方としたしくなるものだと思うので、実際には神杏の方がありそうな気がします。
でも、今回は、その方が設定としてかきやすかったので、桃杏路線でさせていただきました。
でも多分、彼らもここまで落ち着くにはそうとう紆余曲折を経たのではないかとは思います(笑)面倒なので多分描きませんが(笑)(たぶんなので書くかもしれない(笑))



桜草の野原に Vol.2

「あれ?」

桜乃は、一通の封筒を見て、首をかしげた。

「桃城…武…?あ!桃先輩?!」

年賀状が今でも祖母に届いているのは知っていたが、手紙が来るのは、めずらしいな、と思いつつ、残りの郵便物を全部取ってしまってから、桜乃は家に入る。

…桃先輩って、筆不精なのかと思ってたら、結構マメな人よね。

思わず、桜乃はふふ、と微笑んでいた。

今は、桃城武は、主にテニス関係のスポーツジャーナリストとして、名をはせている。

根っからの明るさに、さりげない気配りやあたたかみのあるコメントが支持を受け、今や業界ではひっぱりだこだ。

けれど、桃城は、とても謙虚だ。先日、「仕事の都合で」と言って『ついでに』立ち寄った時にも、桃城の活躍を褒めるスミレに対し、

「いやあ、こんくらいで天狗になってちゃいけねーな、いけねーよ。もっともっと厳しいお言葉なんぞいただいていかないとな」

なーんて言って、敬語を使わんかいっ、とさっそく祖母にどつかれていた。

「おばあちゃん、桃城先輩から、お手紙が」

「ん?ああ、ありがとう、桜乃」

スミレは、今日は珍しく髪をおろしている。

「?おばあちゃん、今日は髪結ばないの?」

「ん?ああ、なんだかね、歳なんだろうね、最近こう、髪をあんまりひっ詰めてるとかえってきついんだよ」

そういって、さみしそうに笑う。

歳―か。桜乃はさみしげなスミレの横顔を見る。

無理もない、のかな。でも、まだこんなに元気そうなのに。

たしかに、祖母はもうどちらかというと70近いかもしれない。

でも、同じ年代の人に比べたら、ずっと元気だし若いと思う。

そうはいっても、あの頃と比べたら、もう、8歳も年をとったことになる。

8年―か。

なんとなく、桜乃はセンチになった。

桃城の名前を見たから、なんとなく思いだしてしまったのかもしれない。

すごく憧れ、目標とし、応援し続けた人。

何度か日本には戻ってきたけど、ほとんど話す機会もなく、また行ってしまった人。

どんどん、遠くなっていく人。

「ああ」

スミレが、少し嬉しそうな声を出す。

「?どうしたの、おばあちゃん」

「桃城のやつ、とうとう腰を落ち着けるんだとよ」

「?腰?え?」

「だぁ~まったく、あいかわらず鈍い子だねえ、桜乃は。まあ、そこがいいところでもあるんだが」

くっくっ、と笑って、スミレは読んでいた桃城からの手紙を、ぱしっと閉じる。

「結婚するってことだよっ」

「え、けっこん…えええええっっ!!結婚?!」

「はっはっは、そうだよ、おめでたいねえ。いやあ、あのばかもんもとうとう…」

「えええええええ、だだだだだって、まだっ、まままだ22…」

「は?桜乃落ち着きな。どうした」

「だだだだって、ままままだ22!22歳だよ?!わわわわわ、わかっ」

一瞬、きょとん、として、スミレは豪快に笑う。

「はっはっは、青いねえ、桜乃も。たしかに今の桜乃じゃあ、来年結婚とかなんてまだまだって感じもするねえ」

「もうっ!おばあちゃん!からかわないでよっ。でも…」

「世間様にはもう桜乃の年で母親になっている人間だってたーくさんいる。桃城が結婚したって何もおかしいことではないよ。それに、河村なんかとっくに結婚していたじゃないか」

「でーでででででででもっ」

「はっはっは。まだ桜乃には刺激が強すぎたかな?」

「もおぅぅっ。おばあちゃんたらまた子ども扱い…」

「あ、そうそう、ホレ、結婚式の招待状だよ。桜乃とわたしの分だ。2ヵ月後だってさ。何やらもっと早めにおしえてくれたってよさそうなもんだがねえ」

スミレはにやにやする。

「…お、お相手は…?」

くくく、とスミレはほんとうに楽しそうに、笑う。

「橘、杏さんだってよ。ほら、不動峰の。いやあ。やるこたちゃんとやってるねえ」

「えっ!ほんと?」

「おや、なんだか嬉しそうだねえ」

「えへへ」

桜乃は急にご機嫌になる。

杏には、よくお世話になった。高校は違ったけれど、なにかとよく会う杏とは、次第に、意気投合して、仲良くなった。かわいがってもらった。

朋香だけでなく、杏と言う―年上ではあるが―明るい友達ができたために、内気すぎるほどの内気だった桜乃も、次第に前向きで積極的な部分が、見え始めた。

桜乃にとって、杏は憧れだ。

そして、杏が桃城を少し気にしていたのは、なんとなく知っていた。

…そうか、もう2年も前になるんだなあ。

杏が、最近桃城くんとよく一緒に出かけられるようになったの!と、頬を染めながら話した。

素直に、嬉しく思ったのを覚えている。

…早いなあ。

わたしなんか、まだ何をするかも決めていないのに…

「…サクノ?」

「ん?あ!ごめん、ちょっと考え事してた…なあに、おばあちゃん」

「お前にいい知らせだよ」

「へ?」

「河村の結婚式にも来なかった奴が、今度ばかりは来るってさ。さすがに桃との因縁は深いかねえ」

くっくっく、と笑う。

「え…い、いんねん、って…」

少し青ざめた桜乃の顔を見て、スミレが苦笑する。

「冗談だよ冗談。ったく。ほら、王子様だよ!」

どくん。

心臓が、まるで、急に今、やっと動き出したかのように、

血液が、桜乃の体をかけめぐる。

「まあ、今のあの貫録じゃあ、王子様っていうより天上天下の王様って感じだけどねえ」

「リョ、リョーマ君が、来る、の?」

「ああ!来るそうだよ。まったく、普段はこっちに帰ってきてもすこしもゆっくりして行かないんだからねえ、今度こそはとっつかまえてかわいがってやるとするかね」

スミレは嬉しそうだ。

スミレにとって、元教え子は同じようにみんな可愛いが、殊越前親子に対しては、思い入れが強いということを、桜乃は知っていた。

でも、自分にとっても、そうに違いない。

こんなに、胸が、踊る。

嬉しくて、言葉が、出ない。

少しは、間近で見れるだろうか。

いつもいつも、テレビの中でだけ、見ていた。

たまに帰国しても、やはり彼は、冷たい。

もともと、自分はただのクラスメイト、あるいは顧問の孫娘、でしかなかった、彼にとっては。

だから、仕方なかったと分かっている。

けれど、離れていると、思いだす。

特に、大学生になってからのこの3年間。

思いだすことが、多くなった。

自分は、ただなんとなく、大学に通っている。

自分の頭じゃ、行けなくてもおかしくはなかった。

なのにこうして大学生をさせてもらえている。

幸せなことだ。

でも、なにをしていいのか、わからない。

そんなとき浮かんでくる思い出は、

『へっぴり腰!』と言われた記憶だったり、

たまに笑ってくれた記憶だったり、

お弁当を食べてくれた、

一緒にスポーツ用品店に行った、記憶。

あれは、彼のきまぐれでもあると知っている。

けれど優しさでもあったと信じている。

あの優しい、一目にはわかりにくい、笑った顔が、

もう一回、見たいなんて。

「で、リョーマなんだが」

「え?」

「ちょうど休暇が取れたそうなんで、23日には日本につくらしいと聞いている…って今日じゃあないかい。まったくもっと早く連絡してほしいもんだね」

スミレはため息をつく。

「ええええ今日?!」

「どうする桜乃は、迎えに行くかい?空港にでも」

「え、ええええええええ?!」

「ははは、冗談さ、何時につくのかも分からないしね。ま、そのうち顔出しにくるだろう」

豪快に笑って、スミレは去っていく。

桜乃はしばし呆然としていた。

ふと、肩のあたりまで切りそろえた髪の毛に、手をやる。

最後に会ったのは、4年前だった。

オリンピックの周期で会うとか。

忘れていると、あっという間だ。けれど、

待っていると、長い。

「髪、切ったの、やっぱりよくなかったかな…」

気分を変えようと思った。変わろうと思った。

けれどまだ、

13歳の時の桜乃はまだ、

今もここに、いる。









=======続く=======




。。。はやく王子出て来いよ(ひとりつっこみ)


桜草の野原に  Vol.1

「正直さ、オレ、今竜崎のこと、好きでは、ない」

その言葉が、桜乃の手足から、すべての感覚を奪う。

桜乃は頭が真っ白になっていた。

好き―初めて、そう、自覚した。

わたし、こんなに、好きだったんだ。

情けない。情けないよ。

初めは、ただの憧れだった。

助けてもらえた―たとえリョーマ君がそう意図していなかったものであったとしても―、そのことが、嬉しくて、

テニスをする彼の後ろ姿も横顔も、全部全部かっこよくて。

歯に衣着せぬ物言い。

たとえ時にそれが胸にぐさりとくるものでも、

その言葉には、嘘はなかった。

それが、彼の性格であり、誠実さ真面目さでもあったと思う。

挑発するような態度。

でも彼はやっぱり真面目で。

天才でもあるけど、人一倍、

見ていて辛くなるくらい、自分を酷使して、練習する。

でもそれを、彼は辛いと思っていない。

本当に、テニスが好きだから。

予測できない、気まぐれな、態度。

からかったような口調。

恥ずかしいし、ぐさっとくることもあるし、さみしかったこともたくさんあったけど、

でも、見れているだけでよかった。

姿を、あの鋭い眼光を、見ることができなくても、別の場所で、リョーマ君はまたテニスにのめりこんでいるんだろうな、がんばってるんだろうな、とおもったら、元気になれた。笑顔になれた。

でも、やっぱり自分は、心のどこかで、リョーマ君に見てもらいたい、

選んでもらいたい、

いつか、テニスの次でもいい、

わたしを好きになってほしいだなんて、

そんなこと、無意識に考えていたんだろうか。

だって、こんなに、こんなに震える。

悲しくて。

そんな自分がいたということ、情けなくて、たまらない。

会わなければよかった。

きれいな思い出にできたのに。

気づくこともないまま、他の人をもっと好きになってたかもしれないのに。こんなにつらくならなかったかもしれないのに。

届かない。

こわい。

桜乃は、精一杯の笑顔をつくった。はは、と乾いた笑いをもらす。

「…なんか、遅くなっちゃったね。もうそろそろ、私も帰るね。ごめんね…練習の邪魔…しちゃって。明日、ちゃんとリョーマ君、来てね?来ないと桃先輩おこっちゃうよ?」

桜乃は、耐えきれなくなって、リョーマに背を向ける。視線が、痛い。

何を考えているか、わからない。

今まで、全然気にならなかった。なのに、自覚すると、こんなにも、普段から無表情な彼の顔に、なんともいいがたい苦しさを感じる。

「ま、またね」

それだけようやく言って、桜乃は出口へと向かおうとする。

「ねえ、ちょっと」

いつになく、リョーマは大きな声を出した。

ハスキーな声。よく通る声。

聴くだけで、泣きたくなるくらい嬉しくなる声。

リョーマは不機嫌そうに言った。

「まだ話終わってないんだけど」

「…え?」

「続きがあんの。ったく。最後まで聞いてよね。このままで終わったらオレもただの悪者ジャン」

「…くない」

「は?」

「聞き…たくない、もう、つらいよ、辛いんだもん」

桜乃は、ぽろぽろと涙を流す。

リョーマは、はあ、とため息をついて、またボールを一球打つ。

気持ちいいくらい澄んだ音が、室内に響く。

ぽーん、ぽーん、と、次のボールを地面に打ち付けて、リョーマはしばらく何かを考えているようだった。

なぜか、桜乃は、その場を動けなかった。

動く勇気をくじかれてしまって、

ただ、その綺麗な横顔を、眺めていた。

リョーマは、また、はあ、とため息をつく。

桜乃は、いたたまれなくなって、また涙が出てきた。

いつも、自分はリョーマにため息ばかりつかせていたような気さえする。

申し訳なくて。逃げ出したくて。

なのに臆病もので。

悲しい。

ただ、かなしい。

「あのさ、オレもさ」

リョーマが、静かに、話しだす。

「その…あまりしゃべるの得意じゃないわけ。だからうまく伝わらないかもね。でもまあ、一応努力はしてみるから、とりあえず、最後までちゃんと聞いてよ」

桜乃は答えなかった。けれど、黙っていた。

リョーマの次の言葉を、怖いなりに、待っていた。

逃げ出したいという気持ちと、まだ声を聞いていたいという気持ちと、両方あった。

「まず、あんたに課題」

「…へ?」

「まず、もう少し素振りの練習すること。その短くなった髪の毛また伸ばすこと。少しは度胸をつけること。変に人を信用しすぎないこと。いつもどおり素直さをもっておくこと。変に自分を卑下しないこともっと自分に自信もつこと」

そう言って、またスマッシュを決める。

リョーマの髪が、ふわっと揺れる。

「それから…待つこと。待てるデショ」

そう言って、リョーマは桜乃の方へ、振り返った。

眼光は、いつになく静かで、でも、鋭い。とても。

桜乃は、声を出せなかった。何を言われているのか、わからない。

はー、と、またリョーマはため息をついた。少し、怒っているようだ。

「ったくさっきのオレの話、ちゃんと聞いてたの?もういっかいちゃんと頭の中で反芻してよ。一度言ったことそのまんま繰り返せるわけないでしょ?」

リョーマはラケットを肩にかける。

「…え、わか、んないよ…だって、え、どういうことなの…?」

リョーマは桜乃の眼を見据える。けれどこころなしかその表情が少し、穏やかになったように感じた。

「だからさ、
















事の起こりは、二か月前。

桜乃、正しくは、彼女の祖母であるスミレのもとに、一通の手紙が届いたことから、はじまった。

まさか、また、リョーマとこうして直に話すこととなるとは、桜乃もまったく思いもよらなかったことである。

人の縁って、不思議だなあ、と桜乃は思う。

縁が縁を呼ぶのだろう。

幸せが幸せを、呼べばいい。









=====続く=====








あーーーーーずっと書きたかったリョ桜始動です!!
原作とはまったく関係ありません。

少し長くなりそうですが、お付き合いくださいませ。。。m(__)m;;

大人になるにつれ、いろいろ考えるところも出てくるような、彼らの姿をえがきたいなあ、と。


ありがとう!(T_T)

2009.02.22 19:04
パンドラハーツ
やっと。。。。やっと、だよ。。。。。




貸してたパンドラやっと帰ってきたよおおおおおぉぉぉぉ(ノ_・。)(ノ_-。)!!!!!!!!!






おかえりっ!!!!




手元にないからね、ずっとずっと恋しかったのに、


なるべく考えないようにしてたんだよ(グスン)





テスト期間中にかえすなぼけええええええっっっっ!!!!


気になって読みなおしたくなるでないのっッ!!!






実はずっと、オズ描きたかった。

でも悲しくなるから描かないようにしてた。

私自身がトーン下がってるのが激しいのもあるし。(いまだにまだたちなおってはいない;)

でも。。。だいぶん元気になった方だよね??

たぶん。。。そうだよね。。。;?




イラスト解☆禁☆彡!!



お久しぶりオズ。
ozrecently.jpg
ozrecently0.jpg
なんとなく一度でいいから、オズに現代人の服を着せてみたい。
ぜったいにあうと思う。意外とオズの身体は曲線美ですよ???
もちろん一番似合うのは、いつものクラシックな服だよーw


アリス。
alice0.jpg
alice_20090222184122.jpg
なんとなく、イギリスの寄宿舎の女の子の制服って感じのを着せたかった。

アリスは、意外に猫背だと思う。

もちろんそんな風には特に描かれていないんだけど、雰囲気的に猫背な気がする。

白アリスは姿勢いい感じする。

でもちろんオズもすっと立ってる気がする。

でもアリスはなんとなくちょっとだけ猫背な気がする。



オズアリ。
ozalice.jpg
すごくごまかしてるけど、アリスは背中抱きつき。
オズはびっくりして、自分の前に回されたアリスの手のうち、左手を握っちゃってます、みたいな感じです。。。


オズってさ。

激しく天然だよね。

しかも自分で気づいていないよね。

鈍感すぎだよね。



オズは、自分のことで今もいっぱいいっぱいだと思う。
一生懸命前に進もうとしてる。

でもさ、オズが必要な人が、いっぱいいるんだよ。
アリスしかりギルしかり、もっともっといっぱいいるよ。

いつか、オズがもっと大人になって、

みんなを受け止めるだけの力を持ってほしいと思う。

それがまた、オズにとっての幸せでもあって、

ジャックと通じるところでもあって、

でも同時にジャックがなしえなかったことでもあると思う。







TOP  NEXT>>

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。